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「病院選び」と「勤務医時代」で知っているか知らないかで差がつくこと

〜場所、決め手から、女性、開業希望者には必須のチェックポイントまで〜

日本大学生命資源科学部獣医学科6年生×承継開業コンサルタント西川芳彦

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今は、その「情報」を知っているか否かで結果がまるで違って来る時代になっています。
それが学生の時であれば、人生を大きく左右してしまうかもしれません。

これから臨床獣医師の道を歩もうとしている学生さんにとって重要テーマである、病院選びと勤務医時代をどう過ごすのかについて、日本大学生命資源科学部獣医学科の学生さん2人との対談を企画しました。

西川:本日は、有難うございます。
今回、この雑誌『Succession』を創刊しようと思った理由の1つは、「1つの驚くべき数字」が分かったことです。
その数字とは、「242件」。
これが何の数字かと言えば、1都3県(首都圏)で2016年に新規開業した件数です。全国の総数が400件くらいですから、日本全国の60%がこの首都圏に集中しています。
これは大変なことが起こり始めていると直感して、まずは学生さんからこの事実を知らしめないといけないと感じたからです。

この数字から予測されうることは、「これから首都圏ではさらなる過当競争が起きて、開業したものの経営不振から倒産したり、勤務医のリストラ解雇が行われるようになっていく」ことです。
獣医学部の学生さんは難関の受験を突破して、6年間も勉強・研究、そして国家試験に合格して獣医師になったとしても、そこからもっと厳しい現実が待っていることになります。

そこで私は、臨床獣医師を目指す学生さんが自分の思いをかなえられるようなサポートができるのではないかと思い、この雑誌を出して、私がこれまでお会いしてきた院長先生たちと学生さんとを結びつけたいと考えました。
私がこの雑誌を通して提案したいのは、2つあります。

1つは、この首都圏ではなく、地方にはまだまだチャンスがあること、もう1つは、新規の他に「承継開業」という方法があることを知って頂きたいこと、です。
本日この対談をお願いした学生さん2人は、ともに6年生で国試前の大事な時期を迎えていて、これから臨床勤務医としてスタートされるわけです。
そこで、今日はこの業界の現況からこれからの見通し、病院選びでのポイントなどをテーマにお話を進めていきたいと思います。

第1部:「勤務医のリスク」について若い時には全く感じることがないのが、勤務医のリスクである

西川:簗場さんと小野さんは4月から勤務医として働くことになるので、まずは「勤務医時代をどう過ごせばいいのか」をテーマにしたいと思います。
そこでお2人にお伺いしたいのは、「勤務医のリスク」についてです。
勤務医にリスクありと聞かれてどういうことか、わかりますか。

簗場未来さん(以下簗場さん):給与がなかなか上がらなくなることでしょうか。

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西川:それも1つのリスクではあるでしょうが、一番大きなリスクは、「その病院に長く勤めることができなくなっていく」というリスクです。
どういうことかと言えば、小動物臨床の現場は非常にハードな仕事です。時間外勤務もあり、繁盛病院は1日に数多くの症例を診ることになります。

つまり、臨床医は「体力が要る仕事」であるということ。
加えて、獣医療技術が日進月歩で進化していますので、知識吸収力も必要な仕事になってきています。
それが50歳を越えて来ると、この体力と知力、気力が衰えてくるようになります。
これを院長の立場からみますと、50代はベテランの獣医師と映るかというとそうではなく、体力、知力ともに充実している40代、30代、20代の方が優秀であると映るのです。

「臨床医はパフォーマンスの点においては年齢とは逆転してしまう職業である」と言えます(上の図参照)。
50歳でパフォーマンスが落ち始めると、「そろそろ辞めてくれないか」とリストラ対象者になる可能性が出て来るということです。50代は子供の教育費などで一番お金が必要な時期ですが、その時に職を失うことになりかねません。
このリスクは、若いうちは全く感じないのですが、年を重ねて行く間に出て来るリスクです。
そのため、50歳以上の勤務医は非常に少ない。これから業界の経営環境が厳しくなってくると、このリスクは一気に高まることになります。

こうした事実を知らないままで勤務医になってそのまま続ける方が安心だろうと思っている人が増えていますから、こうした情報をまずはお伝えしたいと思いました。

簗場さん:私もこれから勤務医になりますが、こうしたリスクがあることは全く知りませんでした。
開業する方が借金等のリスクを背負ってしまうと思っていたので、むしろ、開業せずに勤務医を続ける方が、一生、獣医師の仕事ができて、安心なのかなと思っていました。

西川:小野さんはどうでしょうか。

小野諒久さん(以下小野さん):これは初めて聞きました。

西川: こうした情報を知っているのと知らないのとでは、考え方や行動が大きく変わってくると思います。
この勤務医リスクを感じ取ったことを契機として開業を決断された先生も多くおられます。
勤務医からオーナー院長になれぱ、50歳になった時に若い獣医師に診療は任せて、自分は経営に携わることで病院に残ることもできますし、事業承継で他者に譲って、自分は新たな道に進むこともできるからです。
40歳後半の方ですが、「辞めてくれ」と言われたことをきっかけに私に相談があり、病院を紹介して、その病院に院長になられた先生もおられます。

承継開業について
開業には「新規」の他にもう一つ、第三者への「承継」という方法がある

西川:この雑誌は、「承継開業という、もう1つの開業法があることを学生さんに知ってほしい」という意味を込めて「Succession」と名付けました。
これは「繁盛動物病院を引き継いで開業する」という意味ですが、この「承継開業」についてご存知でしたか。

小野さん:私は将来、開業希望なのですが、この雑誌の創刊準備号を読むまでは「承継開業」という言葉すら知らなかったです。

西川:まだまだ日本では知られていません。
承継と言うと、日本では親子での承継と思われていますが、欧米ではその逆。息子、娘に継がせる文化がないので、他者が継ぐのが普通になっています。
しかしこの日本でも、獣医科大学の偏差値が上がっていることや業界の先行き不透明であることから、子供には継がせない院長も増えてきつつあります。
これは、第三者にとってはチャンスとなります。
その結果として、院長は自分の病院を他者に譲って残すことができ、勤務医は新院長となって自分の病院が持てる。これが、この承継開業のメリットです。

簗場さん:私がアルバイトで行っていた病院は、息子ではなく勤務医先生が継ぐ予定になっていたので、親子ではなく、第三者が継げるのはいいなと思っていました。

西川:私はこれからはますます第三者に譲って行く傾向になっていくだろうと思っていますので、勤務医になられて以降、ますますこの「承継開業」に関心を持って頂きたいと思います。

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「動物病院業界の市場」について
業界はこれから厳しくなるが臨床にはまだ可能性がある

西川:この動物病院業界の市場についてみれば、今はまだ順調であると言えます。
犬の出生頭数は減って来ているのですが、2003年頃からのペットブームの頃のワンちゃんが高齢化を迎えて症例が増えているから、小動物業界は今のところは順調です。
ところが、この高齢犬は2017年をピークに、これから10年以上にわたって減り続けて行きます。2018年、今年はすでにマイナストレンドに入りました。
この業界のトレンドがマイナスに転じたことが誰の目にもハッキリするのが、今の学生さんの4年生(現在の5年生)が獣医師になる2020年頃からと私は見ています(上のグラフ参照)。
こうした業界の動向について、大学で聞いておられましたでしょうか。

簗場さん:業界が厳しくなっていくことは、なんとなく聞いていました。
犬の出生頭数が減っていることも知っていました。

西川:動物病院がこれから厳しくなると聞いて、臨床とは別の道に進まれた友達はおられますか。

簗場さん:はい。 入学当初から「小動物は雲行きが良くない」と先生から聞かされていたので、最初から公務員や企業への就職を目指す人もいました。

西川: 小野さんは別の道を考えることはありましたか。

小野さん:私は臨床での開業を目指しているので、別の道を考えることはなかったです。 これから厳しいとは聞いていたので、どうすれば患者さんに来院してもらえるのかとか、どうすれば満足してもらえる診療ができるのかばかりを考えてきました。

西川:どの大学でも、入学時は小動物の臨床医になりたいと入学されているのに、他の道に転じていく学生が増えていると聞いています。 私はこの雑誌や講演などを通じて、学生さんたちに臨床医にはまだまだ可能性があることをますます伝えていかねばならないと思っています。

開業について
臨床獣医師としてプロになった人はどんな勤務先を探したのか?

西川:これから勤務医として勤められるのですが、これからのことで、開業については意識されているでしょうか。

小野さん:はい、大学入学当初から開業することを意識してきました。

簗場さん:私は開業することまでは考えてはいません。

西川:これからお2人が勤務医として働かれる時代は、業界が厳しくなっていくわけですが、その中でこうすれば自分は生き残れるのではないかと考えられていることはありますか。

簗場さん:私の場合は勤務医として長く勤めるために「常に新しい知識や技術を学んでいく」ことだと思っています。 そしてその病院の中で「できる先生」として評価を受けて、ある程度のポストに就くことだと思っています。

小野さん:私は開業後のことを考えていまして、自分の病院の“売り”、つまりは特徴点をどう出して行くのかがこれからは大事になってくるのだろうと思っています。

西川:これまでに何千人という獣医師先生とお会いしてきたなかで、上手く行っている人とそうではない人との違いがどこにあるのかが段々と見えてきました。
それは何かと言えば、一般的には「休みがしっかりとれるから」とか、「時間外労働が少ない」とか、「給与が高い」という病院に人気が集まるのですが、臨床獣医師としてプロになっている先生方がどういう勤務先を選んできたのかと言えば、「ハードワークであまり休めず、苦労させられる病院」です。

プロになるのはそう甘くはない。できるだけ多くの症例をこなして、多くの難題も乗り越えなければなりません。
20代の若い頃だから、あえてこの苦労する道を選んでいます。
そしてもう1つ、「有名病院に勤務することが必ずしもいいこととは限らない」ことです。
それはなぜか?ですが、有名病院には必ずできる先輩がたくさんいます。
その先輩が難しい症例などを全部やってしまって、新人は雑用係になってしまうことがありうるからです。

週休2日、しかも高給でいいと思っていたら、5年経つ頃には、手術ができない獣医師になってしまいます。 私はそんな人をたくさん見てきましたので、学生の時からこうした予備情報があれば、病院選びも、勤務医になってからの働き方も変わって来るだろうと思って、こうした情報を発信することにしました。

簗場さん:私がこれから行く病院がまさにそんな週休2日の病院です。

小野さん:私は若い頃には少々の無理はしてでもという覚悟で病院に勤めたいと考えています。

収入について
平均的な院長の年収と承継開業年収はこれだけ違う

西川:勤務医と開業医の年収についてですが、その格差がどんどん開いています。それは、病院の売り上げ格差がどんどん大きくなってきているからですが、この収入についてはどうお考えですか。

簗場さん:世間の人たちがどれくらいの給与をもらっているのかがわからないのですが、私としては、子供を普通に育てられて、家が持てればいいかなと思っています。

西川:年収について先輩に聞くことはありましたか。

簗場さん:聞くことはなかったです。
これは、勝手な思い込みかもしれませんが、「獣医師になれば生活していくことには困らないだろう」と思っていたからです。

小野さん:私がこれから勤務する病院に希望するのは、年収は生きて行けるだけあればいい。
その代わりに、たくさんの経験をさせて頂きたいと思います。

西川:ところで、平均的な院長の年収についてご存知ですか。

小野さん:大体500万円くらいでしょうか。

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西川:平均的な病院で、院長の年収は1000万円くらいです。
これが「承継開業」の院長になると、1000万円以下の院長は全体の10%程度になります。つまりは、90%の承継院長は1000万円以上の年収をとっています。特に1500万円以上の院長は45%もいます。
これを世間でみると、サラリーマンで年収1000万円以上の人はたったの5%しかいません。
ただこのグラフの数字は承継開業の院長の平均年収で、新規開業院長はゼロからのスタートです。

この年収と病院の売り上げについてみれば、これから小動物業界が厳しくなってくると、新規開業とこの承継開業の院長の年収は格差と言うよりも二極化していくのではないかとみています。
これは院長の年収ばかりではなく、勤務医の年収も同様です。
繁盛病院に勤めていれば、毎日忙しいけれども、雇用は守られ、給与は上がるが、そうでない病院であれば、勤務医がリストラされるか、病院そのものが倒産してしまうことにもなりかねません。
なぜ、承継開業と新規開業とにこれほどまでの差が生まれてくるのかと言うと、「承継開業は繁盛病院でなければできないから」です。

そこで疑問に思われるのは、「なぜ流行っている病院を譲ろうとするのか」という点でしょう。「儲かっているのに売るはずがない」と、誰もが思うでしょうが、これがこの業界の特殊事情なのです。M&Aとかと言われると、潰れかけた会社だから買収されるというイメージでしょうが、この事業承継はこのM&Aとは真逆です。儲かっている病院だから引き受け手が見つかる。若い獣医師は自分の人生をかけるわけですから。

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この承継で引退される院長の年齢は、50歳代が最も多い。
ここにこの「承継開業のからくり」があります。
臨床獣医師は体力的にも、精神的にもきつい仕事です。繁盛している病院なら、なおさらきつい。

50歳を越えると、どうしても体力、気力が落ちて来るものです。そこで「この忙しさがいつまで続くのか」とふと不安になって、この状態から開放されたいと引退を決断されるのです。
若い勤務医にとっては、いきなり症例があり、売り上げがあるところからスタートできる。

譲る側にも、譲られる側にもメリットがあるから、この承継開業は成り立ちうるのです。 ぜひこの承継開業を目指してください。私がサポートしますので。

第2部:病院選びのポイントについて(場所)
新規開業のみならず勤務先も人気があるのは首都圏である

西川:お2人はもうすでに勤務先病院は決められているでしょうか。

簗場さん:はい、すでに決めて、これから国試に集中します。

小野さん:私はまだです。これからです。

西川:開業希望も首都圏に集中してきていますが、病院選びもやはり首都圏を希望されたのでしょうか。

簗場さん:私は実家が首都圏なので、就職先も実家から近いところで選びました。
まず3年間はその病院に勤めたいと思っています。

小野さん:私は出身が地方なので、勤務医は首都圏で探して、それから地元に帰って開業できればと考えています。

西川:簗場さんは将来についてはどのように考えられていますか。

簗場さん:将来についてはあまり考えてはいません。
開業についてはしたくないと思っています。女性なので、開業リスクを背負いたくはないからです。いずれは結婚して、50歳くらいで体力の限界が来るまで、勤務医を続けられたらと思っています。

西川:そういう考えの女性は多いですね。
これから勤務医として臨床の現場に行きますと、誰もがビックリしたかのように、「これはきつい仕事です」と言われます。 そうした現場については学生時代に予想はできていましたか。

簗場さん:きついことは、ある程度、予想しています。
勤務時間が長いとか、立ち仕事であるとか。
これは体力的にきついかなとは覚悟しています。

小野さん:はい、わかっています。
私は開業希望なので、きつくてもいろいろと体験を積ませてくれる方がいいと思っています。

院長だけでなく、勤務医やスタッフにも聞くのが大事なポイント

西川:簗場さんはどのような基準で勤務先を決められたのでしょうか。

簗場さん:一番重視したポイントは、犬猫だけではなく、私はエキゾチックも診たかったので、うさぎ、鳥、ハムスターまでは診ている病院で探しました。
そしてその他の要素としては、病院の雰囲気と自分に診療や手術をやらせてくれるかどうかでした。特に手術については1年目の私にもやらせてくるのかという点でした。

西川:この手術をやらせるかどうかという点では、たいていの院長は「やらせる」と答えるのですが、確認はしましたか。

簗場さん:はい。院長先生と勤務医先生に「やらせてくれますよね」と念を押して聞きました。

西川:院長だけではなく、勤務医にも聞くのが大事なポイントです。
勤務医は正直に答えてくれますから。
小野さんは病院選びはこれからですが、どんな点を決め手として考えられているでしょうか。

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小野さん:私は自分と近い年齢の先生がいない方がいいかなと思っています。
年齢が離れていれば、色んな経験をされているので、私も多くのことが学べるのではないかと思うからです。

また、自分がやりたいこととして心臓に関心がありますので、専門性が磨ける病院に勤められたらと思っています。
これからのことを考えますと、専門性に特化していても経営的には厳しくなっていくと思うので、一般診療もしっかりとできた上で、心臓には特に強みを持っている病院づくりができればと考えています。

大学で「高度医療機器」があるから設備の充実した病院に行きたい希望が増えている

西川:今は大学でCTスキャンとかMRIなどの高度医療機器があるのが普通になってきています。
そのため、設備の充実した病院に勤めたい学生さんが増えて来ていますが、病院選びでこの設備についてはどのように考えられましたか。

簗場さん:設備についてはあまり注意してみることはありませんでした。
基本的な診療をしっかりとやりたいと思ったので、高度医療機器があるかどうかは意識しませんでした。
私はとにかく3年間はそこで働いて、その間に新しいことに興味が湧いてきたら、その道に進めばいいかなと思っています。

小野さん: CTやMRIまではなくても、エコーは当たり前になってきているので、エコーは備えている病院を選びたいと思っています。
大病院に行きたいとは思っていませんので。

開業希望なら忘れてはならないチェックポイントがある

西川:院長の人柄についてはどう考えられましたか。

簗場さん:いくつかの病院を見学しましたが、そのなかからこの病院にしようと思ったのは、最初から私が診療や手術ができるだろうと感じたからです。
病院の雰囲気も自由にのびのびとやっている感じがあり、なおかつ、きちんとスキルやノウハウを教えてくれる感じの院長先生だったので、そこに決めました。

小野さん: 私はこれからですが、勤務医先生やスタッフさんから院長先生がどんな人なのかを聞きたいとは思っています。
そして院長、勤務医、スタッフがきちんとコミュニケーションがとれている病院に決められたらと思っています。

西川:小野さんは開業希望なので、スキルなどをしっかりと身に付けられるかどうかも見極めるポイントとして大事なことです。
今の多くの病院は獣医師不足なので、勤務医にやめられたら困ると思っています。そのため、開業希望者にスキルやノウハウを教えてしまうと辞められてしまうので、そうはさせないようにしている病院もあります。

その一方で、5年間しっかりと勤めてくれたら開業してもいいと、開業意思を受け入れて応援してくれる院長もいます。 このどちらに勤めるのかで、将来が決定付けられると言ってもいいでしょう。
院長は学生さんには来てほしいので甘い言葉を言いますが、実際はそうでないケースがあります。実際がどうなのかは、勤務医なり、スタッフなりに確かめることが大事です。
これは開業を目指している学生さんの病院選びでは、忘れてはならないチェックポイントです。

女性勤務医として長く勤めたいならこのポイントはしっかり確認すること

西川:女性の場合も、忘れてはならないチェックポイントがあります。
卒業される学生さんの半分は女性ですが、臨床に入って、生涯、獣医師を続けられる女性は非常に少なくなります。
40歳を越えると残っているのは、2割くらいと言われています。
それは、女性には、結婚、妊娠、出産、育児で臨床の激務が続けられなくなるためです。
簗場さんは先輩にこうした点を聞かれたことはありますか。

簗場さん:年齢が離れた先輩がいないので、これまでに話を聞くことはなかったです。
結婚して子供ができると、育児でどうしても獣医師を続けられなくてブランクの時期ができてしまいます。それから育児が一段落して現場に戻ろうとしても、手術の腕も落ちているでしょうから、スキルや働き方などをフォローしてくれる病院があれば、女性は安心して働けるのではないでしょうか。

西川:まさにそうなんです。
女性で長く勤めている人はどうしたのかと言えば、「元勤めていた病院に復帰している」のです。
この意味でも病院選びでは、「育児後に戻れるかどうか、そういう制度があるかどうか」を確かめることは女性としては大事なポイントです。
つまり、これは院長の性格、人柄で決まることになります。
カムバックを受け入れてくれる院長とご縁して勤めることが、女性として長く働くコツです。

この就活で伝えたいこと
1年勤めて納得がいかなかったら次を考えることが大事である

西川:これまでの病院選びなどを通じて、卒業前だからこそ言えることはありますか。 例えば、この就活で感じたこととか。

簗場さん:私が勤務先を探し始めたのは、6年生になってからでしたが、この就活で、実は困ったことがありました。
募集病院にはホームページを見て行きましたが、ホームページで書かれていることと実際とが違う病院があったことです。 私はエキゾチックが診たいので、ホームページでもこの点を重点的にピックアップして病院さがしをしました。 ホームページで「エキゾチック対応」と書いているのに、実際に行ってみると、「今日はない」とか、「1日に1件あるかないか」とか。
これで私は何件もの病院に実習に行かなければならなくなってしまいました。
ポームページを信じたためにこんなことになってしまったことは、これから活動をしようとしている人に伝えたいことですね。
具体的に、例えば、1日うさぎ何匹と書いてくれていると有り難いと思いました。

小野さん: これから就活に入るわけですが、その時には、大学の先生やすでに実習に行っている友達の意見を聞きたいと思っています。
ホームページももちろん見るでしょうが、その中で、勤務している先生の人数は出ているのですが、勤続年数などの情報がプラスされていると有り難いなと思います。

西川:それは、勤続年数が長い先生が居ると安心できるということでしょうか。

小野さん: そうです。

西川:さらには、新卒が多いのか、中途採用が多いのかとか、勤務している先生のキャリアがホームページに出ていると学生さんには有益な情報になるということですね。
最後に私からアドバイスさせて頂きます。
「これから1年間勤めて納得がいかなかったら、思い切って、病院を変えた方がいい」です。
病院の実体は勤めてみないと分からないこともあります。手術をやらせてくれると言っていたのに、実際にはそうではなかったとか。
そんな病院にそのまま居続けると、今の医療技術の進歩に3年でついていけなくなってしまいます。 大学を出た時は同じスタートラインでも、最初の3年間で獣医師としての人生が決まってしまうのが、この獣医師の世界であることをしっかりと頭の中に入れておいてください。

本日は、国試前の貴重な時間を頂きまして、大変有難うございました。